私は料理が苦手です。
それどころか、料理に殺されるかもしれないと思っています。
揚げ物をするたびに、自分がいつかこの油うっかりかぶる可能性が50%程度はあるだろう、と覚悟しています。
包丁は切れ味のなさが重要です。切れるヤツならたぶん最初に自分の指を切ると思います。
実際トースターでお菓子作ろうとしたら油がドリップして、振り向いたら炎が上がっていたことがあります。
そう考えると料理ってなんて危険なんでしょう。
狂人に刃物ということばがありますが、私に刃物、私に火器、私に割れ物…同じくらいの迫力があると思っています。
それにしても、私は自分のこの特性を早くから理解していたので、何とかお料理しなくても生きていけるルートに乗ろうとがんばってきたはずでした。
今だって、自分の生命と家を守るために、ミールキットやテイクアウトを活用するなど、様々な料理をしない努力を重ねています。
それなのに。
気付いたら毎日3回前後、週7日程度食事を作るのがデフォルトなんですよ。
いったいぜんたい、どうしてこうなったのでしょう?
経理業務が壊滅的に苦手だから何とか法務部に就職したら、「わが社は経理業務は各部各個人で行います」と言われたような絶望です。
そんなある日です。ある啓示があったのですよ。
料理はライセンス制にすべきじゃないか。
家庭料理は、次世代の子どもたちを担う、大切な、大切な業務ですよ。
心身共に立派な人間を育てるためにも蔑ろにすべきではありませんよ。
料理を作るのは立派な人間であるべき。それ以外の人間は総菜とレトルト食べておけって話ですよ。私のような人間に、電子レンジ以外の、刃物や火の扱いを許可してはいけないと思うのです。
もし不適格者がこの業務に当たれば、火事や食中毒を発生させかねない。どうでしょう、こんなに大切な仕事を私にやらせるべきでしょうか!?
否、断固私にはやらせるべきではないと、私は訴えたいのです。
そこで僭越ながら資格テストの内容を考えてきました。
知力
まず料理には当然知力が必要です。トランス脂肪酸とは何か、塩素と混ぜてはならないのは何か。賞味期限と消費期限の違いなども、マークシート方式でテストします。
体力・スピード
料理は意外なくらい体力を使います。大根と米をスーパーから運ぶ持久力や、お菓子コーナーで立ち往生する子どもをぶら下げて歩く腕力。
家族の要求や子供のタイプによっては食事中も何度も立つ必要があり、そこから通しで片付け完了するまで、まあまあ長時間立ち仕事になる場合があります。
この間注意を怠れば、ケガや火事のリスクを伴います。そこで、受験者にはバケツリレーを行ってもらい、その後1時間立ち続けることができるかテストします。
注意力
料理に欠かせない能力の1つが注意力です。当然、油や刃物を扱う仕事ですし、砂糖と塩は極めて間違えやすいルックスをしています。
みなさんは、砂糖と塩を間違えて作ったスイーツを食したことはありますか?
私の弟はあります。
まだ幼かった弟は口に含むなり火が付いたように泣き出しました。
あんなかわいそうなことが二度とあってはいけません。
注意力を試すため、受験者はアニメ音楽がかかる環境で、常に横から話しかけられながら割れていない小豆だけを箸でつまんで鍋に移す作業をクリアしなくてはなりません。
パズル力
意外に知られていないのが料理に伴うパズル力です。
その日の献立は、旬のものxその日のセール品x冷蔵庫の残り物x家族の好みx最近の献立x気温x味のバランス といった複雑な要素を複合して決定されます。これらは膨大なメニューの候補の中から瞬時の判断が必要とされます。
テスト内容は以下の通りです。20色のブロックを準備します。参加者の手元に、ランダムで10個のブロックが渡されます。色は重複する場合があります。次に、色の組み合わせ表とスコアが公開されます。
このような感じになっています:
ピンクx黄色x黄緑x灰色…20pt
ピンクxピンクx黒…15pt
組み合わせは50ほどあります。参加者はこの表を1分眺めた後、席から離れたところにあるブロックの箱のところに行くことができます。そこから必要なブロックを取り出し席に戻り、組み合わせ作業をします。箱の中には全色あるとは限りません。また持ってきたブロックを使用しなかった場合は減点となります。
最後に
そもそもなぜ料理を客に提供するのにライセンスが必要なのに、次世代を担う子供たちに提供する家庭料理にはライセンスが不要なのでしょうか?
要するに私が何を言いたいかというと、ご飯作りたくありません。今晩のご飯を作りたくありません。明日のお弁当はもっともっと作りたくありません。
更に言うとお布団からでたくありませんし、お洗濯もしたくありません。
布団から出るのもライセンス制にすればいいと思います。もう全部ライセンスでいいや。どうやらかなり疲れています。